2周年記念インタビュー

SERVE公開2周年記念インタビュー
聖学院学術情報発信システム「SERVE」は2011年2月28日に公開2周年を迎えます。
この間、SERVEの活動にご理解とご協力をいただいた皆様に厚く御礼申し上げます。
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公開2周年記念として、SERVEの閲覧件数・ダウンロード件数ともに常にランクインしている長谷川恵美子先生へインタビューを行いました。

<SERVE閲覧件数第2位・ダウンロード件数第2位>
担当者:先生の論文「ストレス・コーピングの年代差およびその精神的健康度に及ぼす影響」が「SERVE」の閲覧件数第2位・ダウンロード件数第2位となっています。(2011年2月2日現在)感想をお聞かせください。
長谷川先生:これまで、全くそういうことを意識したことがなかったので、びっくりしています。
担当者:普段から、他大学の先生とPDFでの論文の交換やwebページでご紹介などをされますか?
長谷川先生:全くしていないです。ごめんなさい。私の領域のもので、なかなか一次情報をダウンロードできるものがないこともあるのですが。
担当者:各研究機関が無料で公開しているリポジトリの一次情報を一括検索できるデータベースにJAIROがあります。ぜひご利用になってみてください。
先生の場合、webページの紹介などからではなく、純粋な検索でこの件数ということですね。
長谷川先生:私の研究が、ストレス・コーピングの話なので、学生さんにも親しみやすい内容だったのかもしれないですね。


<該当の論文について>
担当者:今回の該当の論文「ストレス・コーピングの年代差およびその精神的健康度に及ぼす影響」(聖学院大学論叢)についてご紹介ください。
長谷川先生:ストレスというものは誰でも受けるものなんですが、ストレスの対処方法によってその受ける影響は変わってきます。対処方法を工夫することで、その影響をある程度大きく、小さくすることもできるんです。また、ストレスの対処法が悪いとこころの面だけでなく、身体疾患にも影響してくるということが最近の研究でわかってきました。この研究では若い方と高齢の方とのストレスの対処方法を比較し、その特徴をまとめました。 その中でも特に私が興味を持っているのは心臓の病気をもつ患者さんのストレスとその対処方法です。ストレスの対処がうまくいかずにうつ状態などになると、患者さんだけでなく、ご家族のQOLも低下するとともに、再発の可能性も高くなります。また生活習慣病の治療では生活習慣の改善が重要ですが、そのような状態ではうまく改善できず、病気が長引いたり、身体はよくなっても自信がなくなり引きこもってしまったりするため、様々な角度から患者さんを支援することが重要です。それを担うのが「心臓リハビリテーション」という分野です。
担当者:この心臓疾患、循環器の患者さんのストレス対処を研究テーマとされたきっかけなどをお聞かせください。
長谷川先生:この研究は、1900年代に米国の循環器病学者フリードマンとローゼンマンによって、タイプA行動パターンが報告されたのがはじまりです。要するに心臓の病気にかかりやすい人にはある一定の行動パターンが見られるということです。
特定の傾向が疾患と関係するのであれば、その傾向を和らげることで病気を予防したり、悪化させないようにできるのではないかと考えて研究しています。
担当者:先生のストレス・コーピング(ストレス対処法)がありましたら教えてください。
長谷川先生:もともとダンスと音楽が大好きなので、個人的には運動です。上手なストレス対処方法のコツをご紹介すると、ストレスの対策方法を複数もつことです。
御自分のストレス対処方法や気分転換を5つぐらい持っているとバランスが取りやすくなると思います。たとえば対処法が食べることと飲むこととタバコだとします。毎日イライラするたびにタバコを吸っていたら、ニコチン依存症になってしまいますが、月曜日はタバコ、火曜日は友達とおしゃべり、水曜日はバスケで発散、木曜日はフットサル、金曜日は本を読んだ、となると、依存症にもかかりにくくなります。一つに限定せずいろいろな対処をすることがポイントです。ストレスだけでなく、人生の中でいろいろな選択肢が持てるということは、視野が広がり、より問題が解決しやすくなります。
担当者:寝る・食べるだけではだめですね。
長谷川先生:その2つは、一番基本となるものですが、あと3つ増やさないと5つにならないですよね。それから大切なのは、いつでもどこでもできるもの、お金や道具がいらないもの、いくつになってもできるものということなんです。たとえば、若いころ使えたものが一生使えるとは限らないので、ある程度の年齢になったら10年後も続けられるものを意識しながら、新しいものを増やしていくという発想がこれからは必要ではないか、特に中高年の方には必要かと考えます。
担当者:体の自由が利かなくなったとき、新しい趣味、新しい何かを見つけるのは難しいですね。
長谷川先生:人間が何かを失うということは気持ちの落ち込みにつながりやすくなります。落ち込むと視野が狭くなりよい方法をみつけにくいので、元気なうちに、いろいろなバリエーションで探しておくことが重要です。
担当者:心理学はそういう意味で実用的ですね。学生さんが授業を受けたがるのもわかるような気がします。図書館でも心理学の本は利用が多いです。
長谷川先生:私は特にその中でも「臨床」という領域なので、おそらく親しみやすいのではないでしょうか。


<今後の研究について>
担当者:今後の研究予定を教えてください。
長谷川先生:最近心臓リハビリテーションという領域の中で、患者さんの体だけではなくこころのケアも問われています。栄養や運動のみならず、こころの面からも再発予防、健康づくりの支援ができたらいいなと考えています。


<授業で学生に伝えたいこと>
担当者:先生が授業を通してなど、学生のみなさんに伝えたいことはありますか。
長谷川先生:学生という間にぜひ視野を広げて欲しい。いろいろなものに触れて欲しいし、いろいろな世界を知って欲しい。そのためには決め付けないで、知らないことが多くて当然なので、知らないことを小さな知識だけで判断するのではなく、どんどん新しいことにふれて自分の選択肢をひろげられるような4年間を過ごしてください。


<おすすめの本>
担当者:最後にお勧めの本を教えてください。
長谷川先生:本は一つの出会いなので、すすめられたというよりも、その時の御自分にフィットしたものを選ばれると良いと思っておりますので、おすすめするのは得意ではありません。今回は、本が苦手な学生のみなさまでも、気楽に読んでいただけそうなものを2冊ご紹介するというのでお許しください。
1冊目は『こころに気づく』
臨床心理学の第一人者である村瀬嘉代子先生にゆかりのある方たちの寄稿による本です。各臨床の分野で働いているひとたちが、そこで働き、ひとと接する中で気づいたことなどがまとめられているもので、短編が集まっているので、読みやすいのではないかと思います。臨床心理の世界に興味のある方には、参考になるのではないでしょうか。
2冊目は『エピソードでつかむ 児童心理学 』
この本は、はじめて児童心理学を学ぶ方にもわかりやすいよう、エピソードを交えながら、児童心理学について簡単に解説された入門書です。


オススメ①

オススメ②

滝川一廣・伊藤直文 編著
『こころに気づく』

日本評論社 2007.3
図書館所蔵あり(2階書架)
146.8||Ta72
伊藤亜矢子 編著
『エピソードでつかむ 児童心理学』

ミネルヴァ書房 2011.1
図書館所蔵あり(3階書架)
371.45||I89

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長谷川先生の論文「ストレス・コーピングの年代差およびその精神的健康度に及ぼす影響」は長期間、SERVEの閲覧・ダウンロード共に上位に位置する論文。どのタイミングでお話をうかがおうかと思っていたところ、今回、2周年記念という形でご協力をいただきました。
お金をかけず、一人でもできて、身体が思うように動かなくなってもできるストレス対処法を5つ・・・。日ごろストレス・フルな生活をおくる多くの方に伝えたいものです。
かく言う私はインドア派。基本的にそんなことばかりが好きなのですが、果たしてそれが本当にストレス対処になっているのだろうか、そして身体にとって良いことなのか・・・ちょっと考えさせられました。これから、いろいろとチャレンジして、対処法も視野も広げていきたいと思います。(菊)

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