7周年記念インタビュー

SERVE公開7周年記念インタビュー
聖学院学術情報発信システム「SERVE」は2016年2月28日に公開7周年を迎えました。この間、SERVEの活動にご理解とご協力をいただいた皆様に厚く御礼申し上げます。
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SERVE公開7周年を記念し、
聖学院大学人文学部日本文化学科長である
村松晋 先生
にインタビューを行いました。
<1.SERVEが7周年を迎えました。>
村松先生:7年というのはあっという間のように感じられますが、人間の歩みにたとえれば、それこそ「赤ちゃん」が「小学1年生」になる期間ですから、ずいぶん時間が経ったともいえるのではないでしょうか。ここまで維持されてきた皆さんのご努力に心から敬服しております。

担当者:SERVEは先生方から頂いたものを整理し、管理していく機関ですので、二人三脚のように、先生方と一緒になって構築してきたものと考えております。先生方のご理解がなくては成り立たないものです。村松先生にもご協力頂き、感謝しています。

<2.図書館に期待していること>
村松先生:常日頃から、自分の研究・教育活動を進めていく上で、本学図書館のご助力に支えられていると感じています。「複写取り寄せ」は大変助かっていますし、学生にもレファレンスサービスを利用するように話をしています。つい最近も希望する資料を探し出してもらったばかりで、感謝しています。図書館は研究に必要な資料を一緒に探してくれる「探偵」のような存在で、まさに資料探索の片腕です。今後とも、どうぞよろしくお願いします。また、他大学図書館への紹介状を準備していただいたり、本を出版する際には細かい書誌情報を見ていただいたりもしました。あらためてお礼を申し上げます。

担当者:ありがとうございます。私どももますます精進していきたいと思います。

<3.アーカイブやリポジトリについて>
村松先生:ネット環境があれば、いつでもどこでも関心のあるテーマについて、先行研究を参照できる点は素晴らしいと思います。国立国会図書館のデジタルライブラリーなどは、一昔前には考えられないサービスですね。ひらめいた時に知的刺激を得られ、便利になったと感じています。
SERVEに関しては、退職された方も含め、尊敬する先生方の「昔の論文」を読むことができていいですね。それぞれのご研究のルーツや変遷を知ることができます。

<4.今後の研究について>
村松先生:私の研究は、広く言いますと日本の近現代の歴史で、なかでも思想史・精神史といった領域を学んできました。
はじめに関心を抱いた時代は1910年代から30年代です。この頃には現代の私たちが直面している問題がほぼ出ているので、「先取りされた現代」ともいえます。したがって、その頃に生きていた思想家たちが紡ぎ出した言葉は、今の私たちにも十分、「処方箋」になりうると考えています。そうした関心は今も持続していて、最近では戦時下を生きた一人の牧師の思想を追っています。
一方、「全集」が残っているような人だけでなく、近代日本の市井のキリスト者の迷いや喜びなども浮き彫りにしていきたいと考えまして、また、埼玉の大学に勤めていることもあり、最近では、秩父のキリスト教の歴史も手掛けつつあります。秩父という地域は、秩父銘仙の関係から絹織物の盛んな地域との往来が多く見られ、また近江商人との関わりもあります。この夏にも、あらためて秩父を訪ねるつもりです。
しかし、いずれも現代に対する自分自身の関心が根本にあるので、決して「興味本位」で進めているわけではありません。

担当者:先生ご自身の知的欲求から出た課題を研究するという、研究者としての真摯な姿勢に感銘をうけました。

村松先生:そんなに「格好の良い」ものではありません。大げさではなく、「寝ている」時以外は、常に「考えている」生活は「苦しい」とさえいえます。ただ、自分の力で何かを発見したり、それを一つの形にできたりした時は何事にも代えがたいと感じます。

<5.学生に伝えたいこと>
村松先生:学生時代に恩師の一人から「本が読めないのは世の中を読めないからだ」と言われました。当時は意味がよく分かりませんでしたが、私なりに考え、今、学生たちにこのように伝えたいと思います。それは、「なぜ作者はその本を書かずにいられなかったのか」、「何を伝えようとしているのか」を意識して読むことが大切であるということです。どんな作品もその時代の刻印を受けているものなので、いつ書かれたものか、なぜ書かれたのかを自問しながら読む癖をつけて欲しいのです。分野によって読み方は違うのかもしれませんが、歴史の立場から読む時は、作品と作者およびその時代は切り離せないものです。常に作品の時代背景を考え、何を言おうとしているのかを問いながら読んで欲しいと思います。

<6.お勧めの本>
村松先生:私自身が学生時代に影響を受け、今の自分を形作ったといえる本を3冊紹介します。

橋川文三 著 『日本浪曼派批判序説』
これは私の研究の原点となっている本です。


松下圭一 著 『戦後政治の歴史と思想』
現代という時代を見る上で常に立ち返る、私の座標軸となっている本です。


ベルジャーエフ 著 『ドストエフスキーの世界観』
人間の深い部分、ふだんは目を向けていない領域をつきつけてくれた本で、私にとって、キリスト教との出会いともいえます。人間とは何かを深刻に考えさせられます。

担当者:先生の根本的なものを成していることを感じられる本を紹介して頂きました。


オススメ①

オススメ②

オススメ③

橋川文三 著松下圭一 著ベルジャーエフ 著
斎藤栄治 訳
『日本浪曼派批判序説』『戦後政治の歴史と思想』『ドストエフスキーの世界観』
講談社 , 1998.6
(原著は1960)
筑摩書房 , 1994.9

白水社 , 2009.5
(原著は1921)
図書館所蔵あり
910.26||H37
(1階文庫新書)
図書館所蔵あり
312.1||Ma88m
(1階文庫新書)
図書館所蔵なし
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今回は村松晋先生にインタビューを行いました。限られた時間でしたが様々なお話をしていただきました。SERVEとの付合いも長くなってまいりました。ずっと面倒を見続けるのは不可能ですが、できる限りSERVEを盛り立てていこうと思います。(田山)


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