<SERVEやリポジトリの利用について>担当者: | SERVEや他のリポジトリをお使いになったことや、研究に活用されていることはありますか? |
木村先生: | 自分の研究に関連していることで他の先生方がどのような研究をされているのかを拝見したり、自分の業績の詳細をまとめるときに便利なので活用しています。 |
担当者: | 先生方同士で抄録の代わりにURLのやり取りをするとか、そういったやり取りはありますか? |
木村先生: | 次回の私の報告はPDF版が先に出るので、先生方にはそれをご案内しようと思っています。 |
<研究ノートについて>担当者: | 今回ご紹介する「環境思想の継承におけるオクタヴィア・ヒル」についてお話を伺います。これは科研費の若手研究Bの助成を受けて研究されているということですが、この研究ノートについて簡単に紹介ください。 |
木村先生: | これは科研費の採択課題の概要です。どういう研究を3年間で行っていくかということを説明しています。テーマは、私が博士論文から研究をしているオクタヴィア・ヒルという英国の女性社会改良者で、英国のナショナルトラストを創設した三人のうちの一人についてです。この方と英国のナショナルトラストの関係を中心に書いています。大きいテーマとしては、環境思想をどのように後世に伝えていくかという、思想の継承に関する問題について現代的意義を考察する内容になっています。 |
担当者: | オクタヴィア・ヒルは、博士論文の時から追いかけていらっしゃるそうですが、これを研究テーマにしようと思った切っ掛けや、魅力などあればお教えください。 |
木村先生: | 博士論文のテーマを絞っていく中で、社会において実践活動を行っていく上で精神性・思想が大切だということに気づきました。実践するだけではダメだと。それを示す実例として、英国のナショナルトラストの創設者の精神を研究してみてはどうかと。ナショナルトラストの活動と精神は環境だけでなく教育とかいろいろなことに関わってくるので良いのではないかと考えたのです。 |
担当者: | 精神論だけではなく実践も伴う、また実践のために精神的な支えが必要ということですか? |
木村先生: | 相乗効果があると思います。自然豊かな、あるいは静かで落ち着いた環境があると癒されたり集中できますし、楽しい環境があるとエネルギッシュにもなれます。逆に良い精神性が育てられることによって良い環境が守られていくのではないかと思います。 |
担当者: | 精神と実践、その両方がないと啓蒙活動やアピールは難しいですね。そういう意味では、当初からトラストの活動はその両方を兼ね備えて実施されてきたのでしょうか? |
木村先生: | そうですね。ヒルを含めて三人の創設者と協力者の方々が、それまでの自分たちの活動に限界を感じて新しい団体が必要となり、ナショナルトラストが生まれました。 |
担当者: | 博士論文で取り上げてから追いかけていらっしゃいますが、最初に見たオクタヴィア・ヒルと今ご覧になっている彼女では、何か新しい発見があったり、ここが興味深かったり、ということがありますか? |
木村先生: | 最初は、大変聡明な方だと思いました。4歳で手紙を書いたり、読書が大好きで14歳の頃には、ジョン・ラスキンの『近代画家論』 という難しい本を読んでいて、天才というか、広くいろいろなことに興味を持ちどんどん進めていける、行動力のある方です。自分とは遠い存在のように思っていました。 でも、伝記を読んでいると悩んだりする人間らしい部分もあるし、ずっと活動を続けていた訳ではなく長い休息の時があったり、困難な時期があったということも発見して、少し身近に感じられるようになりました。 |
担当者: | 今回の研究ノートの中には「ヒルの生涯に行われたナショナルトラストのアピールは一度も失敗したことがない」とありましたが、何が成功の秘訣だったとお考えになりますか? |
木村先生: | そこをこれからイギリスの現地に行って調査・研究出来ればと考えています。いろいろな方から質問されていて、私自身も知りたいことですし、科研費研究のテーマの一つとしてそのまま繋がるものと思っています。 |
担当者: | 最終的に彼女のアピールの手法のほかに、つきつめていきたいと考えられていることはありますか? |
木村先生: | オクタヴィア・ヒルのお話をする際に必ず使う「永続する精神」という言葉があります。形式だけにならないで、精神が入っていて実践に取り組むとことが大事ということです。今の時代は経済や利益追求などの影響も大きく、持続可能性の問題などいろいろありますけれど、その中で少し精神性の方が上に来ることが望ましいのではないかと思うのです。ヒルは、財政的な側面がないと活動は出来ないのでそれも大事だが、それが最終的な最高の価値ではないと言っています。これまで続けてきた研究は、オクタヴィア・ヒルの生涯を全般的に追う形でナショナルトラストとの関係を見てきましたが、今回の研究は、ヒルとトラストの関係に絞ってまとめたいと考えています。 |
<今後の研究について>担当者: | 現在、先生はラーニングセンターに籍を置かれていますが、今後、指導・支援の中で、学生に伝えていきたいことを教えてください。 |
木村先生: | ヒルも「失敗の中にその後の成功がある」と言っています。失敗した時は辛いかもしれませんが、学生時代に勉強でもプライベートでもいろいろな経験をしてもらいたいと思います。 また、人間性の部分でマナーを守り、他者に思いやりのある、優しい人になって貰いたいです。聖学院の学生は思いやりや優しさなどの良い部分を持っているのでそこを伸ばしつつ、勉強の方も助けて行ければと思っています。 |
<図書館について>担当者: | 授業で学生のみなさんに伝えたいと思っていることはなんですか。 |
木村先生: | 以前、『理想の図書館』というテーマの座談会に参加させてもらいました。あの続編の企画はありませんか?とても楽しかったですし、他の方の意見をもっと伺えればと思うのですが。 |
担当者: | ありがとうございます。図書館報の企画ですね。あの企画は、いろいろな立場の方の様々な図書館像が聞けて私も面白かったです。どこかで第2弾をやれたらいいですね。 |
木村先生: | ILLのシステムもよく活用させていただいています。先日、ご存知ない方がいて説明したら活用してくださり、とても良かったと言ってもらえました。 |
担当者: | ありがとうございます。研究室訪問を行って新しい先生方には説明をしていますが、研究室訪問を始めてまだ3~4年で、それ以前からいらっしゃる先生には十分ご案内が出来ていない状況です。図書館としてもハンドブックを配布するなど、広報もしてはいますが、実際に利用されている先生から宣伝していただけることが一番です。今後もお願いします。 |
木村先生: | ILLを使わせていただいて嬉しかったのは、本を少しでも長く借りられるところをいつも司書の方が探して借りてくださるところです。以前、私が自分で他館に直接お願いして行ってみたとき1時間しか館内にいられないということがあって、やはり図書館に事前に相談しなければと思いました。 |
<おすすめの本>木村先生: | 『英国住宅物語 : ナショナルトラストの創始者オクタヴィア・ヒル伝』です。 オクタヴィア・ヒルの伝記で、学生にも読みやすいかと思います。これに「永続する精神」や教育のこと、生い立ちとか活動のことも載っています。一番読み込んでいる本の一つです。 ヒルの活動は、晩年行った環境保護だけでなく、住宅改良などソーシャルワークの社会改良者としての活動があります。人間福祉学部や政治経済学部など本学のどの学部学科にも適応する本かと思います。 環境と言っても、自然や空間だけでなく、音楽・文学・絵など、そういうものも心を癒すものとして総合的に環境を見る視点がこの時代に考えられているのが凄いですね。 最初にオクタヴィア・ヒルに出会って驚いたのが、ナイチンゲールと同じ時代に活動した人だということでした。ヴィクトリア女王即位50年の式典に呼ばれた女性三人の中にヒルとナイチンゲールがいます。でも、日本ではナイチンゲールは有名ですが、オクタヴィア・ヒルはあまり知られていないと思うので知っていただければと思っています。
『小説 細井平洲 : 人を育て、善政を扶けた実学の人』 細井平洲という方は、米沢藩主の上杉鷹山公の先生です。鷹山公に大きく影響を与えた方で、その教え方なども勉強になると思います。 私は、この方をとても尊敬していまして、迷ったときや悩んだときなどに読んでいます。例えば、鷹山公が厳しい財政状況の中藩主となって国入りするときに、藩政改革のために勇気が大事と説いています。物事をなすために勇気が必要であるというところや人を大切にするというところなどに私は感銘を受けました。 この本には、載っていませんが彼の「先施の心」という言葉とその考え方も素晴らしいと思います。 |
担当者: | ※ここで、先生は平洲がキャラクターになっているボールペンを見せてくれました。 |
| オススメ① | | オススメ② |
| E・モバリー・ベル著, 平弘明, 松本茂, 中島明子訳 『英国住宅物語―ナショナルトラストの創始者オクタヴィア・ヒル伝 』 日本経済評論社 2001.09
| | 二宮隆雄 『小説 細井平洲―人を育て、善政を扶けた実学の人』 PHP研究所 1995.10 図書館所蔵あり(3階書架)913.6||H94N |
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図書館にお越しくださってのインタビューとなりました。
4月に依頼しながら(図書館側の都合で)なかなか実現できなかったのですが、やっと実現することができました。
今後、先生とは図書館の利用だけでなく、学生の学修支援などでも連携していけたらと思っています。(菊)
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