<SERVE登録件数2000件目>担当者: | 先生の論文がSERVE登録件数2000件目の記念すべき論文になりました。感想をお聞かせ下さい。 |
標先生: | 時間的にはタイムリーな話だと思います。登録されたことで多くの方に読んでいただければ著者冥利に尽きます。 |
担当者: | 普段はリポジトリやWEBの情報をご利用になりますか? |
標先生: | インターネットから情報をよく入手しています。近頃は政府刊行物のほとんどがインターネットで公開されていますのでそちらの利用が多いですね。食品安全委員会の議事録や安全保安委員会の調査報告書とか。以前は霞が関に日参していましたが、それをせずとも情報が得られるようになり助かっています。 |
<該当の論文について>担当者: | 今回の該当の論文「福島原子力発電所の事故における「想定外」について」(『聖学院大学論叢』)について、簡単にご紹介いただけますか? |
標先生: | 「想定外」は技術者にとっては普通の言葉なんです。設計をするうえでどこかに限界を設定しなければならない。その設定を超えたところが想定外とされる。問題はそれが設定された理由が何であるのかということです。今回の問題は、「想定外」とされた理由が問われているということを言いたかったのです。 |
担当者: | 今回の事故における根本的な教訓は、DBE(設計基準事象)の決め方、すなわちリスク評価のシナリオの決め方(想定の仕方)が重要との指摘されています。また「安全には哲学が必要である」とおっしゃっています。 |
標先生: | 哲学とは物の考え方です。原発についていえば、なぜ非常用電源は地下に設置されていたのか?それはアメリカがそうしていたから。ではアメリカではなぜ地下に設置していたのか?それは竜巻の被害を受けないためと、設置した理由を追及していくと日本で同じことをする必要があったのか、という疑問が生じるはずなんです。そこに疑問を抱かずに設計だけ持ってきてしまった日本の輸入文化依存に問題があるということが見えてくる。 |
担当者: | 今回の論文は原子力発電所の事故についてでした。、日常の生活や職場でも「リスク管理」は重要ですが、「リスク管理」をしていく上で、気をつけるべきことやポイントなどがありましたら教えてください。 |
標先生: | 「リスク」という言葉は使い方と発言者のニュアンスによって意味合いが異なってきます。社会学ではリスクを悪いもの、人に押しつけられたものとして捉える傾向にありますが、サイエンスではリスクは計量できるものと捉えている。私達の立場から言えば、リスク論は色々な分野における自然発生的なものです。それ故、リスク研究学会は色々な分野が集まっているのです。考えるべきは何を避けなければならないか。これを明確にしなければならない。例えば経済的なものか、命に関するものなのかというように。学生なら、単位を落とさないようにするとか。仕事の中では、健康を優先するか、ほかの人に迷惑をかけないようにするか、というように何を優先すべきか選択しなければならないか、リスク論はその判断の基準に関するものです |
<今後の研究について>標先生: | 発生した事故、事件、特に大きなものについてリスクの立場から検証していきたい。特に安全性の論理から考えていければと思っています。リスク論は一つの方法論。ベースがあって初めて論じていける。自分は原子力が専門なので、まずはこの福島の問題を追いかけていきたいですね。 |
<学生に伝えたいこと>担当者: | 授業で学生のみなさんに伝えたいと思っていることはなんですか。 |
標先生: | エネルギー問題についてぜひ考えて欲しい。放射能問題は原発をなくせば解決する面がある。しかし解決しないこともある。原発をただ止めても化石燃料にとって代わるだけですし、自然エネルギーも先行き不安です。そこで省エネに移行する必要がありますが、そのためには生活レベルを変えなければ抜本的に変わらないという現実があります。このことについて、まずは各自が「考える」ということを示していきたい。 |
<図書館に期待すること>標先生: | 新聞記事の検索に聞蔵IIをよく使っていますが他の新聞の記事検索DBが使えるとよいと思う。新聞記事は色々な事象について追いかけるのに非常に役に立つ。学生にもぜひ利用して欲しい。 |
担当者: | 現在図書館では、聞蔵の他に明治から昭和にかけての読売新聞の記事が検索できるDVDと日本経済新聞の代行検索なども提供しています。予算等の関係で自由に利用できる形にはできていません。ですが、ご希望を受けて図書委員会などにあらためて計っていきたいと思います。 |
<おすすめの本>標先生: | 『低線量被曝のモラル』をお勧めします。これは東京大学で行われた討論会の様子を収めた本です。原発についての問題点があぶりだされている本といえます。そして溝を埋めることの難しさも見える。もう一冊は専門と離れたものですが、『薔薇の名前』をお勧めします。エーコの作品は他にも読みましたが、これが一番面白いです。 |
| オススメ① | | | オススメ② | | オススメ③ | |
| 一ノ瀬正樹編著『低線量被爆のモラル』河出書房新社 2012.2図書館所蔵なし | | 中谷内一也『リスクのモノサシ』日本放送協会出版 2006.7図書館所蔵なし | | ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』東京創元社 1990.1図書館所蔵あり(2階推薦)973.9||E19I |
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