登録件数1500件突破記念インタビュー

SERVE登録件数1,500件記念インタビュー
このたびSERVEの登録件数が1,500件を突破しました。
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 その記念すべき1,500件目の論文が清水均先生の「『北村透谷におけるキリスト教』という問題-石坂ミナによる『再生』と『転倒』の有効性-」です。さっそく先生へインタビューに伺いました。

<SERVE登録件数1,500件目>担当者:   先生の論文がSERVE登録件数1,500件目の記念すべき論文になりました。感想をお聞かせ下さい。
清水先生:ほとんどくじには当たらないのに偶然にもあたり光栄です。
担当者:   普段はリポジトリをご利用になりますか?
清水先生:ほとんどないです。研究での情報収集は本から本へ、文献の註を参考にしたり、年鑑をあたる昔ながらの方法を採っています。
担当者:CiNiiやSERVEから先生の論文がPDFでご覧いただけますので、先生同士のやりとりなどでも使っていただけたらと思います。
<該当の論文について>
担当者:今回の該当の論文「『北村透谷におけるキリスト教』という問題-石坂ミナによる『再生』と『転倒』の有効性-」(キリスト教と諸学)についてですが、これは1993年の論文です。ちょっと古いお話ですが、これを研究テーマに選んだきっかけや思い出がありましたら教えてください。
清水先生:自分を重ねて根の深いところから書き始めて言いたいことは言い切ったといえる論文でした。北村透谷におけるキリスト教という問題を通じて、キリスト教に関わった文学者や詩人を語りたいという思いの丈を伝えている面があります。「キリスト教と諸学」という雑誌だからこそ書けた部分があります。
担当者:透谷は石坂ミナへの『愛』を一つのきっかけにして、キリスト教と出会ったとのことでした。先生ご自身のテーマに『愛』があるような気がしているのですが、先生ご自身が『恋愛』や『愛』によって受けられた影響などがありましたら教えてください。
清水先生:大学時代身近にキリスト教を信じている女性がいて、その人にとって神とか信仰とかがいかなるものなのか、ということに非常に悩みました(笑)。その人と関わっていくことに対して自分がどういうアプローチをしていくのか、その距離感を量るのが非常に難しいという所から始まり、最終的には実際にその場(=信仰)に入らないと何もわからないという結論に達しました。彼女の言うキリスト教における愛というのは何なのか?という興味から研究がスタートしたので、それが私における愛というテーマの原点と言えるかもしれません。
<今後の研究について>担当者:   今後の研究予定を教えてください。
清水先生:これまで北村透谷に関連して詩、文学とキリスト教、文化概念について、その一方で現代のポップカルチャーについて研究してきました。これらを続けます。今授業では日本のポップカルチャーを扱っていますが、そこには、もともとは北村透谷を起点として近現代詩を読むという授業をしていたのが、時代の推移とともにポップカルチャーを扱うように発展的に転じてきたといういきさつがあります。即ち、近代詩の言葉がある時点で学生に届かなくなった、それは詩の言葉が現代の学生の生活感覚とずれていることが主な原因だったわけですが、ではそうした生活感覚を生む文化環境とはどのようなものかということを、歌詞を通じて考えるようになり、それをきっかけとしてポップカルチャーの表現全体に関心を持ち始めたということです。ですので、起点としての透谷から現代ポップカルチャーまで、私の中では繋がりを持ったテーマなのですが、根源的な部分としては、文化、キリスト教、詩(文学)から離れることはできないでしょうね。
<学生に伝えたいこと>
担当者:授業で学生のみなさんに伝えたいことはありますか。
清水先生:いっぱいあるけど一番は「他者」という存在について。2000年代の文化を扱う上で重要な作品として「新世紀エヴァンゲリオン」が挙げられます。テレビ版における自意識の物語が劇場版、新劇場版で「他者」への眼差しにおいて大きく変化している点で重要です。「エヴァンゲリオン」をある社会学者は「引きこもり系」と評しましたが、引きこもりは心理的に他者をオミットしつつ求めている。求めながらも自分と違う部分を排除して守りに入る性質を持っています。それが攻撃性を持つと「デスノート」になって積極的に他者の排除へと向かっていく。その文化に最近は変化が見られ、共に生きる「共生」という感覚に転じている。それを象徴するように擬似家族を扱った「マルモのおきて」「うさぎドロップ」「ラストフレンズ」といった作品が登場している。これらの作品は、共同体としてのつながりの中で他者とつながり方を模索しているものと捉えることができます。今の世の中は生きづらい社会ですが、学生には授業で扱う作品、表現を通して、他者への眼差しの持ち方というものを考えてほしい。
<図書館に期待すること>担当者:   図書館に期待されることはありますか。
清水先生:学生が大学に来ている実感を与えられる場所になってくれることを期待しています。昔から授業に出ずにひたすら本を読む学生がいましたが(笑)、そういう学生の居場所にもなってほしい。また今の問題として、読書とは別の問題で独りになりたい学生がいることです。そういう学生がいられるセーフティネットとしての空間になればいい。そしてその確保された個のスペースが段階的に広がっていくと嬉しいです。
<オススメの本>担当者:   最後に、お勧めの本を教えてください。
清水先生:今は女性の作家がすごくいいですね。まず初めに『夜のピクニック』で有名な恩田陸の『ネバーランド』。これをある人に勧めたらはまってくれました。次に桜庭一樹の『赤朽葉家の伝説』ある一家の三代記を描きつつ、その裏にある高度経済成長から現代への流れががよくわかる作品です。最後に村上春樹の『1Q84』好き嫌いはあるでしょうし、評価も分かれますが極めて現代的な問題を含んだ作品ですのでお勧めします。

オススメ①

オススメ②

オススメ③

恩田 陸『ネバーランド』集英社 2000.7図書館所蔵あり(3階書架)913.6||O65n桜庭 一樹『赤朽葉家の伝説』東京創元社 2010.9図書館所蔵あり(2階推薦図書)913.6||Sa46a村上 春樹『1Q84』(book1,book2,book3)新潮社 2009.5図書館所蔵あり(3階書架)913.6||Mu43i



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