お知らせ

SERVE公開9周年記念インタビュー
聖学院学術情報発信システム「SERVE」は2018年2月28日に公開9周年を迎えました。この間、SERVEの活動にご理解とご協力をいただいた皆様に厚く御礼申し上げます。
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SERVE公開9周年を記念し、聖学院大学人間福祉学部子ども心理学科准教授である
竹渕香織 先生
にインタビューを行いました。
<1.SERVEが9周年を迎えました。普段リポジトリを利用されたりご覧になったりすることはありますか>
竹渕先生:学外で自分の紀要をチェックしたい時などに利用することが多いです。自宅や外で仕事している時に、掲載されている巻号などをすぐに確認できるのはいいですね。授業中に学生が調べたい時にもすぐにその場にいきつけるというのはとても利便性があると感じています。ただ今は必要な時にログインしているだけのことが多く、いわば点として使っている感じなので、今回を機にもっといろいろな所に入って利用の幅を広げていけたらと思っています。

<2.これからのSERVEまたは図書館に対して期待していることはありますか>
竹渕先生:ひと昔前は図書館というと、まず必要な本を探し、暗い中から取ってきて借りて行く場所、という印象でしたが、今はゼミで使わせてもらっている通り、知的交流の場が提供されている所、という印象が一番です。
ゼミ室で授業をすることもありますが、図書館ですとパソコンもあるのでその場で検索し、必要な資料をすぐに探しに行き、議論に組み込むことができます。またプロジェクターを使って、発表をすることもできるので、大変便利です。発表する台があるというのもいいですね。一人ずつパソコンに向かって作業するだけの時とは学生の反応が違う気がします。
学問は一人でコツコツとやることも必要ですが、それを共有することも大切だと思っています。ディスカッションすることで違う論点がでてくることもあり、それが研究を育てることになります。みんなで共有することで研究が発展する、という経験は学生にとっと目から鱗のようで、そうした環境が整っていることは恵まれていると感じていますし、私自身もとても楽しく利用させてもらっているところです。

担当者:正に今われわれが目指している図書館像ですので、そのように言っていただけるのは、大変ありがたいです。

竹渕先生:本に触れる機会が少なくなっている学生も多いので、みんなで図書館を使う経験も大きいと思います。ゼミで習慣的に図書館を利用することで、図書館に出入りすることや本に触れることに慣れて欲しいという思いもあります。

<3.研究分野について教えてください>
竹渕先生:今は青年期の発達障害、コミュニケーション障害について研究しています。
特に最近はアレキシサイミアという概念について興味があります。それは、自分の感情を理解することや、言葉で表現することが困難な現象のことです。発達障害が脳の機能障害であるのに対し、こちらは後天的影響と言われており、トレーニングすることで発達障害とは別の支援ができるのではないかと考えられているものです。単に研究の対象としてだけでなく、学生相談の観点からも、人間関係に困難を抱えていたり、自分にコンプレックスを持っていたりする学生に対して何か生かせるのではないかと関心を寄せているところです。
もう1点は、そうした困難に対する予防的なこととしてボディワークのようなことにも興味をもっています。困ったことに対する支援として、言葉のコミュニケーションだけでなく、「心と身体はつながっている」という観点から行うワークのことで、授業で実際に取り入れたりしています。今後発展させていけたらよいなと思っています。
学生時代は幼稚園の先生になりたくて、そこから発達心理学に興味を持ち研究を始めたのですが、色々な縁があり学生相談に携わることになりました。ですからそもそもの出発点は子どもが対象でした。けれども発達というのは流れがあるものなので、対象年齢差はあっても基本的な見方や理解の仕方には違いはないのではと思っています。自分自身の興味は少しずつずれてきたのかなと感じていますけれど、学問とは根幹があり枝分かれしていくものなので、体系はきちんともっておくことを忘れないようにしています。学生にも伝えていますが、興味が広がりすぎてつながりがなくなってしまうことがないよう、元に戻ることを意識することが必要ですね。

<4.学生に伝えたいこと教えてください>
竹渕先生:本に関することで言うと、心理学や対人援助など人と関わる仕事に就く人には特にたくさん読んでほしいです。実際に自分で体験することも大事ですが、本は自分の興味があることや、知らない世界を知ったりする窓口となってくれる存在だと思うのです。登場人物から投影し、自分とは違う考え方や価値観、人生を理解したり、コミュニケーションの取り方を知ったりするということがあると思います。「自分とは違うからいいや」ではなく、共感する心を持つことはとても大切なことだと思います。心の世界はとても大きいものですが、意識できているのはごく小さい部分だけです。ですから小説や物語をきちんと通して読み、そうしたことを文脈から感じ取ってほしいです。
それから授業で本のプレゼンを行うのはとても面白いですね。去年のゼミで初めて行ってみたのですが、映画化された小説を紹介した学生がおり、たまたま発達障害を抱えた主人公の話だったので、その後みんなで映画を鑑賞しました。主人公が実際に困っていることや生きづらさなどを具体的に知ることができ、そこから更に興味を持つ学生もいれば、現実の厳しさに躊躇する学生もいるなどさまざまな反応が見られ、授業が盛り上がりました。思いがけない子が思いがけない本を紹介することもあり、面白いですね。誰かが紹介したことをきっかけに興味を持つこともあるので、とてもよい取り組みだと思っています。

<5.先生のおすすめの本を教えてください>
竹渕先生:①M・スコット・ペック『愛すること、生きること : 全訳『愛と心理療法』』創元社 , 2010.9
昔は『愛と心理療法』というタイトルでした。
精神科の先生がクライアントの治療を通して生きるということについて考えていく本なのですが、事例を挙げながら心理療法や精神療法をわかりやすく丁寧に紹介してくれています。自分とはどんな人間なのか、どのように生きていくかなど、悩むことは大事なことだとわからせてくれる本です。勉強として読むこともありますが、読み物としても楽しめます。読みやすい本ですが、内容はとても深いです。
②梨木香歩『西の魔女が死んだ』新潮社 ,2001.8
学生に紹介されて読んだと思うのですが、電車の中で思わず泣いてしまった本です。何か困難にあった時、どのように感情が動くのかというと、やはり人との関わりの中で気づかされたり癒されたりすることが大きいと思うのです。劇的な変化はないけれども、誰かに影響を受けて人生が進んでいくということは大きな体験ですよね。主人公が思春期青年期なので、この時期にぜひ読んでほしいと思っています。私もいまだに時々読み返したくなる本です。


オススメ①

オススメ②

M・スコット・ペック 著梨木香歩 著
『愛すること、生きること : 全訳『愛と心理療法』』『西の魔女が死んだ』
創元社 , 2010.9新潮社 , 2001.8
旧版図書館所蔵あり(2階書架)146.8||P33図書館所蔵あり(1階文庫・新書)913.6||N55n
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