SERVE公開10周年記念インタビュー | |
聖学院学術情報発信システム「SERVE」は2019年2月28日に公開10周年を迎えました。この間、SERVEの活動にご理解とご協力をいただいた皆様に厚く御礼申し上げます。 |
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 | SERVE公開10周年を記念し、 聖学院大学学長であり聖学院理事長でもある 清水正之 先生にインタビューを行いました。 |
<1.10周年を迎えるにあたりひとことお願いします>清水先生: | システムや登録の方法など幾度かの変更を経て、ようやく成熟してきた印象です。 蓄積も増えてきて十分に活用可能になってきていますね。徐々にではありますが、科研費の申請が増えてきている点からも、外部へ向けての研究の活性化につながってきていると感じます。 それから聖学院大学の力であるキリスト教研究や福祉研究などの成果を発信することで、認識してもらえる機会も増えたように思います。外部から受ける認証、評価というのは大学にとってとても重要なことです。SERVEは大学のよい評価に十分関わっているのではないでしょうか。 ひとつ気になるのは、学生にはどのくらい認識されているのかということです。 |
担当者: | 機関リポジトリというものがあり、それが聖学院大学ではSERVEであるという認識はまだまだ低いように感じます。CiNiiで検索してヒットしたことで気づかれることの方が多いのではないかと思います。 |
清水先生: | 発信することが大切なので、アクセスできているのであれば、それでもいいのかもしれませんね。 ところで総研紀要はすべて公開されているのでしょうか。こちらは全国レベルで読まれている分野なので、投稿した時点で公開されるのが理想なのですが。 |
担当者: | 2011年以降は先生方から許諾をいただけていますので随時公開しています。また、今後は先生がおっしゃられるような動きになると思われます。 |
<2.SERVE、図書館に期待していることをお聞かせください>清水先生: | 近年デジタル化を始めとし、図書館の機能が大きく変わってきていますね。より一層の充実、強化を期待します。 聖学院大学では留学生や社会人の利用が増えてきていると思います。そうした人たちがアクセスしやすい、またアクセスする機会や方法を身につけることができるよう、努力して欲しいです。それから公開講座も開催されているので、講師をされる先生の業績をリポジトリと紐付けするなど、連携を取れるといいですね。 研究とは人類の知恵からくるものであり、歴史の積み重ねが大事だと思います。ですから、ぜひ聖学院の知恵をアーカイブやリポジトリから学び取って欲しいです。
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担当者: | 正にそれがリポジトリのひとつの機能ですので、「聖学院の知恵」と改めて言葉にしていただき、身の引きしまる思いです。 |
<3.SERVEを利用してよかったことはありますか>清水先生: | 持ち歩く必要がなく、いつでもアクセスできる点です。また学生、院生が利用できるので、教育指導上助かります。 ただ、登録するには入力に時間がかかってしまうので、二度手間になると感じることがあるのですが。 |
担当者: | リポジトリはセルフアーカイブを基本としていますが、今のところSERVEでは公開してよいものであればデータ、紙、問わず図書館にいただければ登録作業をいたしておりますので、ぜひお持ちください。 |
<4.研究分野について教えてください>清水先生: | 研究していることは日本の倫理学、哲学です。今後は近代を基点にいくつか主題をまとめていきたいと考えています。 もうひとつはキリスト教と、日本の近代哲学の関係についてです。日本の近代哲学に、キリスト教がどう影響を与えたのか、十分に整理されていないので研究していきたいです。もともと一貫して「人間関係の問題」というテーマで研究を進めてきましたので、今後も追及していきたいと思っています。 |
<5.学生に伝えたいことは何ですか>清水先生: | 自分にとって何が大切なことなのか、価値判断を持って行動して欲しいという事です。 人生の中でどの課題が重要であるのかそうでないのか、見極める力を持つべきだと思うのです。重要だと思うことには、根気強く、時には人の手を借りながら諦めずに追及してもらいたいです。実践するためには、図書館との関わりも必要となるでしょう。 |
担当者: | 図書館がそのような存在になれたらと思いますし、またそのような要望に耐えうるようにならなければいけませんね。 |
<6.おすすめの本を教えてください>清水先生: | ① | ヴィクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』 これは小学生の時に少年版を読んだのを初めに、原文を含め何度も読んできた本です。 個人の人生、善や悪を非常に大きな時代の情景の中で描いているという点でとても好きな本です。一番印象的なのは、何ページにも渡るパリの地下下水道での描写です。可能であれば、また読んでみたいですね。 何度も読んだ本をまた読み返すことができる時間のゆとりがある、というのは人生において、とても幸せなことだと思います。
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| ②
| 夏目漱石『私の個人主義』, 講談社, 1978.8
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| ③ | 森有正『経験と思想』, 岩波書店, 1977.7 こちらは専門に関わる分野の本です。どちらも個と集団について、重要な問題提起をしている内容で、現代においても大きな影響を与えている本だと思います。 |
<最後に先生から今回のインタビューの総括をしていただきました>清水先生: | 図書館には聖学院大学の研究力・教育力が高まるよう、より一層の発信力を期待します。聖学院大学が埼玉県のこの地にあるという地域社会への働きかけがようやく高まってきたところなので、広報的な意味でも図書館の機能とうまくからんでいけることが望ましいです。 また先日大学近隣地域にお住まいのひとりの方から図書館をよく利用しています、と声をかけられました。図書館にはこうした地域貢献にも期待しています。外部の利用者にもSERVEを始めとしたアーカイブも活用してもらえるといいですね。 ただ、すべてをデジタル化に頼るのではなく、取っ掛かりとして活用し、そこから知恵の深さや豊かさを想像してもらいたいです。そしてその想像力を養うのは、やはり本をたくさん読むことではないでしょうか。ですから学生には本を読むことの大切さを伝えたいです。 |
オススメ① | オススメ② | オススメ③ |
ヴィクトル・ユゴー 著 | 夏目漱石 著 | 森有正 著 |
『レ・ミゼラブル』 | 『私の個人主義』 | 『経験と思想』 |
岩波書店(岩波少年文庫) , 2010.9 | 講談社(講談社学術文庫) , 1978.8 | 岩波書店 , 1977.7 |
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図書館蔵書あり 出版社・訳者違い | 図書館所蔵あり 914.6||N58w(2階推薦ライフD) | 図書館所蔵あり 104||Mo45(4階和図書) |
・岩波書店, 豊島与志雄訳 953.7||H98m(3)||1-4,(1階文庫・新書) ・新潮社, 佐藤朔訳 953.7||H98M(2)||1-5(1階文庫・新書) ・潮出版社, 辻昶訳 953.7||H98m||1-3(3階書架) ・はる書房, 黒岩涙香訳 953.7||H98m||1-2(3階書架) ・河出書房新社, 井上究一郎訳 908||Ka92||9-10(3階書架) ・イースト・プレス, まんがで読破 080||Ma43||29(2階推薦) |
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ようやく10周年記念インタビューをお披露目することができました。ご協力いただきました清水先生には大変お待たせしてしまい申し訳ありません。今年度はインタビュー後にすこしバタバタしてしまいましたが、どうにか落ち着きました。来年度はペースを取り戻してSERVEに取り組みたいと思います。なお、今年の図書館報に30周年記念誌とは少し違う方向でSERVEの歩みを載せる予定です。そちらも4月以降にご覧いただければ幸いです。(田y) |
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