お知らせ

SERVE公開13周年記念インタビュー
聖学院学術情報発信システム「SERVE」は2022年2月28日に公開13周年を迎えました。この間、SERVEの活動にご理解とご協力をいただいた皆様に厚く御礼申し上げます。

SERVE公開13周年を記念し、人文学部児童学科教授である、
松本祐子 先生
へ書面にてインタビューを行いました。

<1.SERVEが13周年を迎えますが、そこで一言お願いします。>
 13歳のお誕生日、おめでとうございます。いよいよティーン・エイジャーの仲間入りですね。人で言えば思春期、あれこれ揺れ動くお年頃ですが、人ならぬSERVEはもちろん、そんなお悩みとは無縁で、すっかり一人前のシステムとして定着している印象です。
 書籍や論文の電子化が進み、自宅にいながらにして、検索ワード一つで山ほどの情報が手に入るありがたい時代になりましたが、私たちはますます自らの選択眼を試されるようになっているということでしょう。今回、私の論文へのアクセス数が多めだったと聞いて、改めて発信者としての責任の重さも感じました。

<2.これからのSERVEや図書館に期待することはありますか?>
 オンライン全盛の世の中ですが、図書館というリアルな空間の持つ意味に魅力を感じます。SERVEのようなシステムによって、ますます利便性が高まる一方で、「知」が蓄積された場所には何らかの力が宿っている気がします。その空間に身を置くことで、私たちは何かを得ることができるのではないでしょうか。



 話はズレてしまうのですが、一つ図書館にまつわる個人的なエピソードを思い出しました。私が大学院生だった頃、高校時代の親友が同じ大学院に入学してきたんです。学部も違い、同じキャンパスにいてもすれ違いが多かったので、ふと思いついて、図書館の本を通じて手紙のやり取りを始めることにしました。まだメールなど普及していない時代です。二人で一冊の本を決めて、ページの間に手紙(けっこう分厚い…)をはさんで交換していました。ちなみに、デュ・ガールの『チボー家の人々』全7巻の最終巻で、ああいう長大な小説の最終巻までたどりつく人はまずいないだろうと踏んで選んだわけですが、数ヶ月後のある時、見つかってしまって、手紙が抜き出され、「こういうことはやめましょう」という付箋をつけられてしまいました。
いい年をした大学院生がそんな手段で連絡を取り合っていたなんて、誰もがスマホを持ち歩く今となっては、レトロ過ぎて笑ってしまう嘘のような実話ですが、なんともロマンチックではないですか?
※図書館所蔵有 デュ・ガール著『チボー家の人々』3F書架:953.9||Ma53t 等

<3.現在の研究内容と今後の研究について教えてください>
 カズオ・イシグロの作品には児童文学的、少女マンガ的な趣が感じられるものがあります。ノーベル文学賞受賞後第一作の『クララとお日さま』は、ロボットのクララが自分を買ってくれる人が現れないかとショーウィンドウで待っている場面から始まりますが、これがルーマー・ゴッデンの人形ファンタジー『クリスマス人形のねがい』の出だしとそっくりなんです。AIロボットの一人称で綴られる語りの手法に注目しながら、この作品を読み解いてみたいと思っています。

<4.学生に伝えたいことはありますか>
 早さや便利さ、手軽さに慣れすぎると、失うものもあるということでしょうか。苦労して手に入れたものは大事にしたくなるし、自分にとって価値が高まる気がします。映画やドラマも倍速やダイジェストで見るというのがトレンドのようですが、大切なことは、時間をかけてじっくり取り組んでみてほしいですね。

<5.お勧めの本をお願いします>
①『魔女は真昼に夢を織る』 作:松本祐子
 自分の本の宣伝で恐縮ですが、聖学院大学出版会から出した『魔女は真昼に夢を織る』を読んでもらえたら嬉しいです。作家デビューのきっかけとなった二十代の頃の創作作品とファンタジー関連の論考を同時収録したもので、重厚なイメージの聖学院大学出版会の本の中では異色の一冊であることは間違いないと思います。

②『ペロー昔話・寓話集』 作:シャルル・ペロー
 それから、授業でも勧めていますが、物語の基本中の基本、シャルル・ペローの昔話集を一度、読んでみてください。「サンドリヨン(シンデレラ)」や「赤ずきん」、「眠れる森の美女」など、誰もが知っている(つもり)の昔話を集めたものですが、「眠れる森の美女」の後半の展開などは驚愕のあまり腰が抜けそうになるし、それぞれの話の後にペローのつけた教訓が17世紀のものとは思えないほど現代的です。昔話なんて子どもの読むものと思っていたら、大間違いです。

オススメ① オススメ②
松本祐子 著 シャルル・ペロー 著
『魔女は真昼に夢を織る』 『ペロー昔話・寓話集』
聖学院大学出版会 2016.12 西村書店 2008.11
  
図書館所蔵あり 図書館所蔵あり
2階推薦100C 他
909.3||Ma81m
 4階児童書・絵本
909.3||P42
電子版有※学内 

SERVE13周年記念インタビューをお届けします。前回に引き続き書面による質問インタビューとなりました。
依頼の決め手は松本先生執筆論文の「「バムとケロ」シリーズに見る新しい家族の形」『聖学院大学論叢』第32巻2号,pp.33-46.が昨年度上位となったためです。
なお、お手紙の素敵なやり取りのエピソードがありましたが、もし私が勤務中にそのお手紙を発見してしまったならば、やはり付箋に「やめましょう」と書いて貼ってしまうと思います(笑)(田y)